映画「ラストエンペラー」感想 ネタバレなし&あり

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歴史に翻弄された男の生涯を描く壮大な歴史ドラマ。
三歳で皇帝となり、やがて全てを失ったー。

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原題名The Last Emperor
制作国イタリア/イギリス/中国
制作年度1987年
上映時間2時間43分
監督ベルナルド・ベルトルッチ

わずか3歳で清朝第12代皇帝として即位した溥儀は、下界をほとんど知らないまま紫禁城で過ごす。

だが、辛亥革命により清朝は崩壊し、皇帝の地位を失う。

成人した溥儀は、再び権力を取り戻すことを望み、日本の支援で満州国の皇帝に即位。

しかし、それは名目上の地位にすぎず、実際には日本の傀儡かいらいとして利用されるのだった。

愛新覚羅溥儀あいしんかくらふぎ [清朝皇帝]

演:ジョン・ローン
生年月日 1952年10月13日
婉容えんよう [溥儀の正妃]

演:ジョアン・チェン
生年月日 1961年4月26日
レジナルド・ジョンソン [溥儀の家庭教師]

演:ピーター・オトゥール
生年月日 1932年8月2日

「ラストエンペラー」は、アカデミー賞作品賞を含む9部門を受賞した歴史大作です。

清朝最後の皇帝溥儀の流転人生が丁寧に描かれており、見ごたえは十分。

名匠ベルナルド・ベルトルッチ監督が、西洋から見た東洋を壮大かつ詩的に描いています。

実際の紫禁城で大規模ロケを敢行しており、圧倒的なリアリティを持つ映像は圧巻の一言。

アカデミー賞作曲賞を受賞した坂本龍一の音楽も、物語に深い余韻を与えています。

歴史ものが好きな人、映像美を味わいたい人におすすめです。

愛新覚羅溥儀(1906~1967年)

1906年光緒帝こうちょていの弟、じゅん親王の長子として誕生
1908年第12代清朝皇帝に即位
1912年辛亥革命により退位
1924年クーデターにより紫禁城から退去
1934年満州国皇帝に即位
1945年満州国崩壊により退位
1950年中国で戦犯として収容される
1959年特赦され出所
1964年「わが半生」を出版
1967年死去

印象に残ったシーン10選

印象に残ったシーンを紹介します。

1 即位式

わずか3歳の溥儀の前で、数百人の家臣が三跪九叩頭さんききゅうこうとうの礼をするシーンが圧巻。

けれど、3歳の子供にとっては退屈そのもの。

コオロギの鳴き声に気を取られます。

家臣から小さな壺に入ったコオロギを受け取る溥儀。

これがラストシーンの伏線になっているのだから心憎い。

三跪九叩頭の礼→中国の皇帝に対面する時の儀礼。
        3回ひざまづき、そのつど頭を3回、合計9回床につける。

2 授乳シーン

あの授乳シーンは・・・衝撃。

溥儀は10歳くらい?

先帝の妃たちが乳母アーモを追い出したのも無理はない。

「乳母というより、ちんの好きな女だ」と独りごちる溥儀。

好きな女・・・。

不健全。

とても不健全。

けれど、宦官と先帝の妃たちに囲まれた生活をしていたら、不健全にもなります。

3 裸の王様

溥傑ふけつから「皇帝じゃない」と挑発され、宦官に墨汁を飲ませる溥儀。

しかし、溥傑は白けた表情で「袁世凱えんせいがいが大統領になった」と言い放ちます。

教育係に「朕はまだ皇帝か?」と尋ねると「この紫禁城内では皇帝でございますが、城外では違います」と告げられます。

裸の王様であることを初めて知った溥儀。

何とも切ないシーンでした。

4 母の死

母が自殺したことを知り、紫禁城の外に出ようとする溥儀。

しかし、目の前で門を閉ざされてしまいます。

飼っていたネズミを門に投げつけてしまうほどの絶望。

乳母アーモ、母と大切な人を次々と失ってしまう溥儀。

溥儀の深い孤独をまざまざと見せつけられたシーンでした。

5 レジナルド・ジョンソン

溥儀の家庭教師であり、友人でもあるイギリス人のレジナルド・ジョンソン。

初対面での長い握手(握手が長すぎる。監督が「カット」と言わないので、仕方がなく握手していたようにも見えてしまった)

そして、別れの場面での固い握手。

去っていくジョンストンの背中を、涙ぐみながら見送る溥儀の姿が切ない。

レジナルド・ジョンソンを演じたのは、アカデミー賞に8度ノミネートされた名優のピーター・オトゥール。

圧倒的な存在感で、物語に深みを与えています。

6 変わり果てた婉容

かつてはモダンで、聡明で、快活だった皇后婉容

しかし、アヘン中毒に陥り、見るも無残になった姿が衝撃的でした。

周囲の人々に唾を吐きかけて回るシーン。

精神が崩壊しながらも、唾を吐くという形で憎しみを示していて、胸が締め付けられる思いでした。

7 甘粕あまかす正彦

冷酷で、策略家で、常に溥儀を見下す態度を取る甘粕正彦。

けれど、坂本龍一が演じているせいか、腹が立たない。(同じ日本人として、ひいき目に見てしまう)

本業はミュージシャンなのに、役者もイケる。

甘粕は最期に拳銃自決します。

当初、監督は切腹自決させる予定でしたが、坂本龍一が反対。(切腹=ステレオタイプになるので)

拳銃自決に変更されたという経緯が。

大物監督相手に物言う坂本龍一がすごい。

けれど、史実では切腹でも拳銃でもなく、服毒自決でした。

8 召使い大季の逆ギレ

長年にわたり溥儀に仕えてきた召使いの大季。

収容されても、溥儀の靴ひもを結ぶなど、献身的に尽くします。

それなのに、溥儀と別々の部屋になった途端、態度急変。

大季を見つめる溥儀に対して「まだ私を召使いだと思っている」とまさかの逆ギレ。

気持ちは分からなくもないですよ。

もう召使いでも何でもないので。

けれど、最後まで忠義を尽くす姿を見たかっただけに、この態度は残念。

最後に逆ギレって何よ。

9 収容所の所長

召使いの大季が溥儀に靴ひもを結んでいる様子を、ドアののぞき穴からのぞく収容所の所長。

このシーンが同性愛っぽく見えてしまった。(演出がそれっぽかったので)

自分で結んでみろと言わんばかりに、わざと溥儀の靴ひもをほどく所長。

けれど、これは溥儀のためを思ってのこと。

厳しさの中にも人間味あふれる温かさがあり、溥儀の再教育に尽力する所長の姿が印象的でした。

10 ラストシーン

溥儀は入場料を払って紫禁城へ。

玉座に腰かけていると、少年に注意されます。

「私は中国の皇帝だった」そう言って玉座の裏から壺を取り出し、少年に手渡します。

少年が壺を開けると、中には一匹のコオロギが。

そして、少年が振り返ると、溥儀の姿は消えていました。

冒頭の即位式で溥儀が受け取ったコオロギが、ラストで回収される秀逸さ。

もちろん、半世紀以上も前のコオロギが生きているわけがありません。

コオロギは溥儀自身。

壺から出たコオロギ、すなわち紫禁城、満州国、収容所を出た溥儀が、ようやく解放されたことを表しているのではないでしょうか。

このラストシーンンの演出は、見事としか言いようがありません。

これほどまでに1人の男の人生を追体験しているような感覚に陥る作品は他にありません。

歴史映画の金字塔と呼ぶにふさわしい名作でした。