
ディオールとシャネルの知られざる一面が垣間見れるドラマが面白い。
香水「ミス・ディオール」の名前に込められた想いとは?
「ニュールック」はApple TVで視聴できます。
配信が終了する場合もございますので、最新の情報はAppleTVにてご確認下さい。
基本情報
| 原題名 | The New Look |
| 制作国 | アメリカ |
| 製作年度 | 2024年 |
| エピソード数 | 10エピソード |
あらすじ
第二次世界大戦のナチス占領下のパリ。
クリスチャン・ディオールとココ・シャネルは、ナチスに協力せざるを得ない状況に置かれる。
2人は人生をかけて苦難を乗り越えようと奔走するのだった。
登場人物とキャスト
| クリスチャン・ディオール [ファッションデザイナー] 演:ベン・メンデルソーン 生年月日 1969年4月3日 |
| ココ・シャネル [ファッションデザイナー] 演:ジュリエット・ビノシュ 生年月日 1964年3月9日 |
| カトリーヌ・ディオール [クリスチャン・ディオールの妹] 演:メイジー・ウィリアムズ 生年月日 1997年4月15日 |
| ルシアン・ルロン [ファッションデザイナー] 演:ジョン・マルコヴィッチ 生年月日 1953年12月9日 |
感想(ネタバレなし)
誰もが知る世界的に有名なファッションデザイナー、クリスチャン・ディオールとココ・シャネルの半生を交互に描いた作品です。
名前はもちろん知っていましたが、まさか彼らの半生がこれほど波乱万丈だったとは!
実際の出来事に着想を得た作品なので、非常に興味深く見ることができます。
ファッションデザイナーとして成功するといった、ありきたりなストーリーではありません。
ブランドに対するイメージが、ガラリと変わること間違いなしの骨太のドラマです。
感想(ネタバレあり)
ナチスとの関係
パリがナチスによって占領されていた第二次世界大戦下。
クリスチャンもココも、ナチスに協力せざる得ない状況でした。
ルシアン・ルロンに雇われていたクリスチャンは、ドイツ軍人の妻や娘、彼らの恋人になったフランス人女性のために渋々ドレスを作ることに。
「ドレスに罪はない」と自分に言い聞かせるクリスチャンの苦悩が垣間見れます。
一方、ココはドイツ軍に捕まった甥のアンドレを釈放させるため、ナチスと取引することに。
全てはアンドレのため。
それなのに、ナチスとココの関係を知ったアンドレは、彼女を売るんですよね。
はぁ?
ちょっと待ってくれよ。
アンタを助けるためにナチスのスパイになったのよ。
ココが捕まったら、アンタと娘のガブリエルが路頭に迷うじゃありませんか。
アンタの結核が治ったのは、ココの尽力のおかげ。
アンタがぜいたくな暮らしをできるのもココのおかげ。
ココに依存しておきながら裏切るってどういうことだよ。
恩知らずにもほどがあります。
ラストは怒り心頭でした。
クリスチャン・ディオールとココ・シャネル
ドラマでは同年代に見える2人ですが、実際はココはクリスチャンより22歳も年上なのだということにびっくり。
ココの見た目が若い。
当時すでに60歳だったなんて・・・。
その年で男性にモテモテだったんですね。
さて、2人の性格が正反対なのが面白いです。
絶対に友達にはなれないであろう2人。
クリスチャンは裕福な幼少時代を過ごし、繊細で、真面目で、心優しい愛されキャラ。
ココは孤児院育ちで、気性が激しく、わがままで、狡猾な性格の持ち主です。
けれど、なぜか憎めない。
当時、上流階級出身でもないココが、地位と名誉とお金を手に入れるには、したたかでないと務まりませんからね。
ファッションに関しても2人は正反対。
クリスチャンは1947年、長いスカートとウエストを強調したシルエット「ニュールック」を発表。
女性らしさ、エレガンスを追求したファッションでした。
一方のココは、1956年にシャネルスーツ(ツイード製の襟なしジャケットと膝丈のスカート)を発表。
女性の解放と自立を追求したファッションでした。
ドラマの冒頭で、クリスチャンの「ニュールック」を批判するシーンがありますが、これはみっともなかった!
悪口を言えば言うほど嫉妬しているように見えてしまいます。
年上女の余裕を見せないと。
実際の出来事に着想を得たドラマ
このドラマは「実際の出来事に着想を得たドラマ」となっています。
しかし、どこまでが本当なのか気になるところ。
というわけで調べてみました。
● カトリーヌ・ディオールについて
ドラマを見るまで妹カトリーヌのことは全く知りませんでした。
彼女の壮絶な体験が、全て事実であったということに衝撃を受けます。
カトリーヌ・ディオール(1917年8月2日~2008年6月17日)は、クリスチャンの12歳年下の妹です。
戦時中、レジスタンスとして活動。
1944年、ラ・フェンスブリュックの強制収容所に移送されますが、1945年に解放されます。
戦後は南仏プロヴァンスで花を卸す仕事を開始。
1947年に発売された「ミス・ディオール」は、クリスチャンが最愛の妹に捧げた香水です。
90歳で亡くなるまで、クリスチャン・ディオール美術館の名誉会長でした。
● クリスチャンの性的指向について
ドラマではジャックという恋人がおり、同性愛者であることが描かれていました。
しかし、実際のクリスチャンはプライベートを公にしていなかったので、同性愛者かどうかは分かりません。
● ココとナチス
ココがナチスのスパイ作戦「モデルフート作戦」に関わっていとことは事実です。
コードネームはウエストミンスター。
ドラマに登場したドイツ人将校シュパッツことハンス・フォン・ディンクレイジは、ココの愛人でした。
そして、ヴァルター・シェレンベルク親衛隊少将について。
ドラマではココに対して好意を抱いているような雰囲気でしたが、親子ほど年が離れているので(27歳差!)まさか・・・と思っていました。
しかし、実際は愛人関係だったようです。
どんだけモテるんだよ。
● 甥のアンドレ
アンドレがココを裏切ったのかどうかについては不明。
というのも、アンドレに関する情報がほとんどないのです。
しかし、アンドレの娘ガブリエルに関しては、1971年にココが亡くなるまで40年以上、近くで暮らしていたことが本人の証言で明らかになっています。
● エルザ・ロンバルディ
ココの旧友エルザ・ロンバルディは存在しませんが、ヴェラ・ベイト・ロンバルディは存在します。
ヴェラはケンブリッジ侯爵(ジョージ5世の妻メアリーの弟)の非嫡出子と噂されている女性です。
(ヴェラの名前をエルザに代えたのは、彼女の出自に遠慮したから?)
ココはヴェラの紹介でチャーチル首相ら大物たちと交流を深めることができました。
ドラマではエルザ(ヴェラ)は、スイスのホテルでモルヒネの過剰摂取で亡くなります。
しかし、実際にはスイスではなくローマで亡くなっています。
過剰摂取による死なのかどうかは明らかになっていません。
総評
クリスチャンとココの人生を最後まで描くものだとばかり思っていたので、シーズン2がないのは残念です。
クリスチャンは1957年、52歳という若さで急死。
その後、イヴ・サン・ローランが主任デザイナーの地位に就きました。
一方、ココは1971年、87歳で亡くなります。
時代を作った2人の濃厚な人生は、十分見ごたえがありました。

