映画「パワー・オブ・ザ・ドッグ」感想 ネタバレなし&あり

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ヒューマンドラマかと思ったら極上サスペンスだった!
衝撃のラストは見逃せない。

原題名The Power of the Dog
制作国アメリカ/イギリス/ニュージーランド/カナダ/オーストラリア
製作年度2021年
上映時間2時間6分
監督ジェーン・カンピオン

1920年代のアメリカ、モンタナ州。

威圧的でカリスマ性のある兄フィルと、穏やかで優しい弟ジョージは、牧場を経営していた。

ジョージが未亡人の女性と結婚したことで、兄弟の関係に変化が生じ、隠された秘密が明らかになっていく。

フィル・バーバンク

演:ベネディクト・カンバーバッチ(1976年7月19日生まれ)

牧場主。

常に高圧的な態度を取る男。

しかし、それには隠された理由があって・・・。

フィルを演じるベネディクト・カンバーバッチは、TVドラマ「シャーロック」で一躍スターダムに。

今や飛ぶ鳥を落とす勢いの俳優です。

イギリス人だけれど、カウボーイ姿が意外とお似合い。

ローズ・ゴードン

演:キルステン・ダンスト(1982年8月30日生まれ)

ジョージの妻。

フィルにいびられてかわいそう。

財産目当てだと思われても仕方がないですけどね。

ローズを演じるキルステン・ダンストは、子役時代から活躍する数少ない俳優の1人です。

子役の時は人気があっても、大人になって仕事がなくなるのは世の常。

キルステンの場合は、子役時代から見た目が変わらないというのも大きいと思います。

小さい時はかわいかったのに今はちょっと・・・という失望感がない。

ジョージ役のジェシー・プレモンスと2022年に結婚。

ジョージ・バーバンク

演:ジェシー・プレモンス(1989年4月2日生まれ)

フィルの弟。

フィルとは正反対の心根の優しい男。

兄に容姿いじりされてかわいそう。

ジョージを演じるジェシー・プレモンスも子役出身。

ただキルステンとは違って、知名度は全くありませんでした。

ここ数年頭角を現してきた遅咲きの俳優です。

ピーター・ゴードン

演:コディ・スミット=マクフィー(1996年6月13日生まれ)

<同作でゴールデングローブ賞助演男優賞受賞>

ローズの息子。

いたいけな美少年だと思って高をくくったら、大けがをします。

いや、大けがだけではすまなかった・・・。

ピーターを演じるコディ・スミット=マクフィーも子役出身。

主要な俳優4人の内3人が子役出身ということになります。

美少年顔なので、中年になった時どうなってしまうのか心配・・・。

最初は単なるヒューマンドラマなのかなと思ったんです。

ストーリーが淡々と進むので、このまま盛り上がることもなく終わるのかと思いきや・・・最後にとんでもない爆弾を落としてきました。

衝撃のラストに言葉を失います。

中だるみがあるので、途中で見るのをやめる人がいるかもしれません。

絶対にだめです!

あのラストを見るために作られた映画といっても過言ではないのですから。

ネタバレなしで見てほしい。

フィルの秘密

男らしく教養もあるリーダー的存在の牧場主のフィル。

愚鈍だけれど心優しい弟のジョージ。

2人で仲良く暮らしていたのに、弟が食堂で働いていたシングルマザーのローズと結婚したことで、暗雲が立ち込めます。

とにかくフィルが、ローズと連れ子のピーターをいびります。

姑の嫁いびりよりもすごい。

ローズはノイローゼになりアルコール依存症に。

そして、細見で少女のような風貌のピーターに対しては、女々しいとからかうんですよね。

ところがですよ。

フィルが同性愛者であることが発覚。

ピーターに秘密を知られてしまったことで態度が急変するんです。

当時同性愛はタブー。

自分の本性を隠すためにあえて男らしく振る舞い、美少年のピーターを嫌悪していたわけなんです。

フィルのピーターに対する態度があまりにも過剰なので、映画ファンなら序盤で同性愛者なんじゃないかとうすうす気づきます。

気になって仕方がないから、逆にいじめてしまうという小学生男子の心理と同じ。

前半の嫌な男から一転、後半は哀れみさえ感じてしまいました。

サイコパスのピーター

ピーターは、フィルにいじめられるかわいそうな美少年として登場します。

これが完全なミスリードでした。

フィルだけでなく、視聴者もまんまとだまされることに。

ピーターは、徐々にサイコパスとしての一面をのぞかせるようになります。

印象的だったのは、母親を喜ばせるために捕まえたウサギを解剖するシーン。

医大生なので別におかしくはないんですよ。

けれど、何とも言えない不気味さが漂っていました。

ピーターは、見た目とは違って狡猾で、フィルを葬り去る計画を着々と進めていたことがラストで明らかになります。

あれっ?この映画ってサスペンスだったの?

まだ心の準備が・・・。

ラストシーン

フィルに復讐がしたいなら、彼の正体を暴露して、恥をかかせればいいだけの話だったのでは?

フィルを牧場から追い出せたでしょう。

けれど、サイコパスのピーターがそんなことで満足するわけありません。

完全犯罪を計画します。

ピーターはフィルに投げ縄作りをしたいと持ちかけ、事前に病気で死んだ牛の皮を用意し手渡します。

都合よくフィルが手にけがをしていたので、傷口から感染。

翌日、炭疽病たんそびょうで亡くなってしまいます。

まさかピーターの計画殺人だなんて誰も思わないでしょう。

しかも、犯罪証拠品の投げ縄を処分するのかと思いきや、戦利品としてベッドの下に保管します。

サイコパスあるあるですよね。

ラストでこんなに急転直下した映画をあまり見たことがありません。

味を占めたピーターがこのままおとなしくなるとは思えません。

継父のジョージも邪魔だと思ったら殺しそう。

彼のサイコパスとしての人生は始まったばかり。

後味が悪いけれど、心にズシンと重くのしかかる見ごたえのある作品でした。